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鳥取地方裁判所 昭和32年(行モ)2号 決定

申請人 真教寺

被申請人 鳥取県知事

主文

申請人の申立を却下する。

申立費用は申請人の負担とする。

理由

申請人は「被申請人が申請人に対して昭和三十一年十二月二十一日附受道第八七六号換地予定地指定変更通知書により申請人所有の別紙目録記載の墓地について為した換地予定地指定処分の執行は鳥取地方裁判所昭和三十二年(行)第一号換地予定地指定変更処分取消等請求事件の判決あるまでこれを停止する」との裁判を求め、右事件の請求原因として掲げるところは、(一)本件換地予定地は国有林野であつてこれを本件区画整理地区に編入するには主務官庁である農林大臣の認許を必要とするところ、被申請人は、認許権限のない大阪営林局長の認許を得たのみで、農林大臣から適式な認許を受けて居らないから、右国有林野の整理地区編入は無効である。従つて本件換地予定地指定変更処分もまた無効である。(二)本件換地予定地は、行政財産であつて、国有財産法第十八条によれば、山林の植栽維持を防げない限度においてのみ使用又は収益権を設定しうるに過ぎない以上、申請人に所有権を取得させることを目的とする換地処分の対象となし得ないことは明白であるから、右林野を換地予定地とした本件換地予定地変更処分は違法であると謂うのである。よつて、考察するに、(一)国有林野を区画整理地区に編入するについて要する主務官庁の認許は所轄営林局長においてもこれを与える権限を有するものと解する。また、(二)国有林野が適法に区画整理地区に編入され換地予定地として指定を受けた場合、その使用収益の関係は専ら区画整理関係諸法令の定めるところによるのであつて、その限度に於ては最早行政財産としての管理及び処分に関する規整に服するものでないから、右林野の被指定者の使用収益に何ら支障はないのである。要するに本件指定処分には申請人主張の違法はなく、申請人の訴は理由があるものと推測し難いから、本件申立はその余の点について判断するまでもなく失当として却下を免れない。よつて申立費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 胡田勲 浜田治 古市清)

行政処分執行停止決定申請

申請人  真教寺

被申請人 鳥取都市計画事業鳥取火災復

興土地区画整理事業施行者

鳥取県知事

行政処分執行停止申請事件

申請の趣旨

被申請人が申請人真教寺に対して昭和三十一年十二月二十一日附受道第八七六号換地予定地指定変更通知書により申請人真教寺所有の別紙目録記載の墓地について為したる換地予定地指定変更処分の執行は鳥取地方裁判所昭和三十二年(行)第一号換地予定地指定変更処分取消請求事件の判決あるまでこれを停止するとの裁判を求める

申請の理由

一、申請人真教寺は別紙第一目録記載の墓地の所有者である。

二、被申請人は鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区画整理施行者であるが昭和三十一年十二月二十一日申請人真教寺に対し同日附受道第八七六号換地予定地指定変更通知書により別紙第二目録記載の如き内容の土地を換地予定地として指定処分を行つた

三、右換地変更処分に依り申請人は従前の墓地に対する使用権を失い以後右換地予定地に対する使用収益を取得する(鳥取都市計画事業鳥取火災復興土地区画整理施行規程第七条)のであり従つて申請人は従前の土地上にある墳墓を換地予定地上に移転すべき義務を生ずる事になる

四、右換地予定地として指定されたる土地は国有林であり国の行政財産(企業財産)であり、国有財産法第十八条の規定によつてその用途目的たる山林植栽維持を妨げない限度においてのみ使用又は収益権を設定しうるに過ぎずその余の処分は一切禁止されたる土地であるので申請人に所有権を取得せしめることを目的とする換地処分の対象となしえない土地であることは明白であるのでかゝる土地を換地予定地とする本件処分は又違法であること明白であるので申請人は被申請人に対し右換地予定地指定変更処分の取消を求める抗告訴訟を御庁に提起して係争中である(御庁昭和三十二年(行)第一号換地予定地指定変更処分取消請求事件)

五、上述の通り本件換地予定地指定変更処分の存在により申請人は従前の土地上の墳墓を換地上に移転する義務を課せられ現に被申請人は昭和三十二年十一月十一日附直轄移転通知を同年同月二十日申請人に発送し申請人はこれを同月二十一日受領したが右通知によると十一月二十五日より被申請人は申請人所有の墓地に存する墳墓を施行規程第十条及耕地整理法第二十七条により移転することになつている

六、耕地整理法第二十七条施行規程第十条の規程による直轄移転は換地予定地指定処分の内容実現のための執行処分と解すべきであるが(施行規程第五条乃至第十条耕地整理法第二十七条)仮りにこれを別個の行政処分と解するとしても耕地整理法第二十七条は「整理施行ノタメ必要アルトキ」強制移転を為し得るのであり本件においては墳墓を換地予定地に移転することを内容とするものであることは明かであるので本件換地予定地指定処分が無効若しくは取消の瑕疵を存する場合には右必要性を欠除することが明かとなり被申請人は法律上事実上直轄移転行為をなすことを得ぬことになるのでいずれにしても本件換地予定地指定変更処分の効力を停止しなければ本案訴訟の成否に拘らず申請人は墳墓移転を行わざるをえぬことになる

七、申請人所有墓地に存する墳墓移転のためには

(1) その数約千百基、埋葬せる遺骨は無慮数万を数えこれが発掘移転をなすには計上し難き巨費を必要とし

(2) 換地予定地たる山林と申請人墓地との間約壱里の間の運搬費を必要とし

(3) 換地における整地、墳墓の再建に多大の費用を投ずる必要あり

(4) 違法なる換地予定地指定変更処分であると信じつゝやむなく移転を行う申請人及墳墓所有者の精神的打撃は祖先崇敬思想の強い日本人の場合真に計上し難い且つ永遠に回復し難い精神的損害を受ける

八、以上の理由に基ずき行政事件訴訟特例法第十条第二項に基ずき本申請をする

(疏明方法、付属書類および別紙目録省略)

申請理由補充申立書

申請人  真教寺

被申請人 鳥取県知事

昭和三二年行第 号行政処分執行停止申請事件

右事件につき申請理由を左の通り補充申立てる。

一、執行停止の緊急性について。

申請人は緊急性について、換地予定地指定処分後は従前の土地の使用収益権を失うこと、及び主として十一月二十五日より予定される物件直轄移転処分の存在を主張するのであるが、この点について換地予定地指定処分と物件直轄移転の関係について更に詳述する。

(1) 本件の被申請人が着手せんとしている直轄移転は、施行規程第十条により耕地整理法第二十七条にもとずいて行うものであることは疏第四号直轄移転通知により明白である。

(2) 施行規程第十条は同第五条第二項、第七条、第九条を前提とする 即ち、第五条第二項により換地予定地の指定を受けた場合、土地所有者は第七条により従前の土地の使用収益権を失うと共に換地予定地上に使用収益権を取得し、従つて第九条、第十条による物件移転の義務は「従前の土地」に対する使用収益権を失つたことを前提とする。

(3) 即ち施行規程第十条による直轄移転は換地予定地指定処分の効果として申請人の従前の土地に対する使用収益が剥奪されたことを前提とし、申請人に課せられたる従前の土地上の物件の換地上えの移転義務の強制履行の方法である。

(4) 右十条の直轄移転の法律上の根拠として耕地整理法第二十七条によるのが本件直轄移転である。

(5) 従つて、本件直轄移転は換地予定地指定変更処分の内容を事実上実現するための行政上の強制執行であり、従つて当然右換地予定地指定変更処分の有効を前提とするものである。

(6) しかし、仮りに本件直轄移転は法律上換地予定地指定変更処分の執行とは別個の処分であるとの議論があるとしても、前述の様に被申請人が執行せんとしている直轄移転は施行規程第十条により耕地整理法第二十七条にもとずいて行う処分であつて、それ以外の処分ではないので、有効なる換地予定地指定処分の存在を前提とする後続の処分であることは否定出来ない。

(7) 以上の理由で、本件執行停止の緊急性あることは明かと考える。

右補充申立をする。

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